WBCムエタイ会長インタビュー
「WBCムエタイは、ムエタイをワールドワイドに普及させます」
ゴーヴィット・パックディープーム氏はWBCムエタイ会長とともに、WBC全体の副会長も務めているムエタイ&ボクシング界の重鎮。昨年行なわれたオスカー・デラホーヤVSメイウェザー戦では立会人も務めるなど、アメリカでも大きな影響力を持つ。WBCムエタイについて話をうかがうと、ゴーヴィット氏はもうすぐ70歳に手が届く人とは思えないほどエネルギッシュに語り始めた。
- --ムエタイと付き合い始めたのは?
- 「小学生の頃、地元でムエタイをやっていました。タイの子供はみんなそうですよ。ボクシングをやっていた時期もありましたね」
- --腕前の方は?
- 「ムエタイもボクシングも学校でやっていたレベルですよ。チャンピオン? そこまでは考えなかったです(微笑)」
- --ひじょうに流暢な英語を話されますが、英語はどこで身につけたのですか?
- 「両親の薦めもあって、1957年から62年までサンフランシスコにある大学に留学していました。さすがに現地にムエタイはなかったですね。個人的にやっている人はいたかもしれないけど、ムエタイの組織はなかったと記憶しています」
- --帰国後はどんな職に就いたのですか?
- 「警察です。30年以上務めましたけど、国際部にいた期間が長かったですね。その関係で国際警察との関係がひじょうに深い。日本の警察とも密に連絡をとっていましたよ」
- --そうだったんですか。
- 「警察を定年退職してからはABCO(WBCの傘下組織であるアジアボクシング評議会)の代表に就任しました。それからずっとボクシングとの付き合いは続いています。それからですよ、WBCもムエタイをやってくれたらいいなぁと思い始めたのは」
- --最初にWBCでムエタイをやり始めようと思ったのはゴーウィット会長なのですか?
- 「今から4~5年前、WBCのホセ・スライマン会長と私が協議したうえで決めました。そもそもムエタイは世界的な認知度が高い。それをボクシング協会の中で規模が一番大きなWBCが認めたうえでやればもっと世界的に普及すると考えたのです」
- --ホセ・スライマン会長もすんなりとWBCムエタイの設立を認めてくれたのですか?
- 「ムエタイはセルフ・ディフェンスとして数あるマーシャルアーツの中でもひじょうに優れた競技です。だからスライマン会長もすぐに理解を示してくれました」
- --タイ国内でムエタイといえば、二大スタジアムであるラジャダムナンとルンピニーがそれぞれ認定した王者とランキングの力が絶大です。そうした中でWBCムエタイはどんな役割があると思いますか?
- 「確かにタイ国内でラジャダムナンやルンピニーのタイトルやランキングは大きな効力を持っていると解釈しています。一方、WBCムエタイはワールドワイドにムエタイを普及させることが役割だと思います」
「日本人は本物を求めている。だから絶対ムエタイを欲しますよ」
- --これまでになぜムエタイは世界的に普及しなかったのだと思いますか?
- 「やはり小さなグループが混在しながらやっていて長く続かなかったからでしょう。私たちはWBCムエタイルールに則り、きちんと試合や大会を運営していこうと思っています。そこの部分で従来の組織や団体との差別化を計りたい」
- --現在WBCムエタイには何カ国が参加しているのですか?
- 「WBC(ボクシング)は163カ国。一方のWBCムエタイは100カ国ちょっと参加しています。近い将来、できれば、ボクシング同様、163カ国を目指したい」
- --5年後、10年後、WBCムエタイはさらに大きな組織になっていると予想しますか?
- 「絶対に成長しています。ムエタイは素晴らしい格闘技。その魅力に引かれて、いろいろな人が打ち込んでくれることは間違いないと確信しています」
- --ムエタイに似た他の立ち技格闘技についてはどうお考えですか?
- 「中にはいかにもショービジネスに走ったものもありますね。日本がルーツであるキックボクシングもムエタイというネーミングがいいづらいので、今の名称になったと聞いています。ムエタイが別の形(名称やルール)に変わって紹介されてしまったケースはひじょうに多い。これからそれをきちんと修正して、ホンモノのムエタイを紹介できたらと願っています」
- --日本でムエタイが浸透する可能性は高いと思いますか?
- 「日本人はホンモノを求めている。だから絶対にムエタイを欲しますよ」
- --今後JPMCには何を期待しますか?
- 「何事もやる気を持って行動に移ることが大切。その点、JPMCのスタッフの皆さんはやる気があるので安心しています。ぜひ日本でムエタイを普及させてください」
- --今後、世界でムエタイとボクシングは共存共栄を計っていけると思いますか?
- 「ムエタイとボクシングは全く違う競技。けっして敵対するものではありません。すでにアメリカやヨーロッパでは有効関係を結んでいます。スポーツとしてのムエタイを世界中に広める。それが私の使命です」
ゴーヴィット・パックディープーム
Kovid Bhakdibhumi
1938年3月30日、タイ・アントーン県出身。70歳。
現WBCムエタイ会長、WBC副会長、ABCO会長。
警察とボクシングの仕事を併せて来日は10回以上